ヘルシンキ建築日誌 2月17日(木) →HOME



⇒AY078:関空11:55発→ヘルシンキ15:20着の予定が15:00着(同日)

□:昼食:機内

⇒空港バス→フィンエアー・シティーターミナル(中央駅の西側)16:00着


★ヘルシンキ中央駅(エリエル・サーリネン、1904-19、1999屋根増築)

(解説)コンペには勝ったけど、その設計のナショナルロマンティシズムを批判されたサーリネンが、外国を訪問・研究したり長年練り直して完成させた有名な駅。花崗岩で造られ、高い時計塔が立つ。正面出入口に2体ずつ計4体のランプを持った像がある。
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(コメント)コンペは1904年で、完成は15年後である。この時間差の間に何が変わったか。最初の案は確かに国立博物館を思わせるようなナショナルロマンティシズムであった。ごく当たり前の特徴からいえば、完成した駅も「工芸」から連想するような一種の温かさを目指している点では変わりない。「フィンランド民族」というカラーや主張こそ無くなったが、もっと抽象的に「工芸に宿る民族性」、汎的な「民族性」みたいなものが依然として示されているよいうに見える。

 ここで、ごくごく概要的にモリスからバウハウスまでの工芸(+関連する建築)の動きを要約すると、第一に、工芸を固有の土着性から引き離しナショナリズム化し、第二に、固有の民族性から引き離し一般化・純化しつつ独自のアイデアを膨らませ、第三に、抽象芸術と共に抽象性を増して行くという3重の重なり合ったプロセスと考えられないだろうか。この3段階でいえば第2段階めに色々な動きがある。例えばアールヌーヴォー、グラスゴー(マキントッシュ)、ゼツェッション(ワーグナー、オルブリッヒ等)、表現主義、などなど。こういったものの中で、あの光る玉をもった2体の像と丸い駅舎のファサードを位置づけられる筈である。まだ「冷たさ」が幅を効かす前の「暖かさ」に属するデザインといえよう。

     

 ラスムッセンの『北欧の建築』によれば、アスプルンドが1930年にストックホルム博のプランを作ってモダニズムが流行る前から、北欧の建築伝統にはかなりあっさりしたシンプルなデザインがあった。そうはいっても、『北欧の建築』に載っているさっぱりした建物の事例はせいぜい1920年代くらいからである。中央駅のコンペに敗れたフロステロスの抗議は1904〜05年頃に出ている。フロステロスの案が実現していたら、 スウェーデン劇場 くらいの「さっぱり度」になったであろうか。かなり早いような気がする。

 サーリネンは、 国立博物館 を見ても建物の外側の作り方はうまいと感じていた。感触を豊かに伝えてくれる。この中央駅でも、石造のディテールに至るまでじっくり見るに値すると思う(尤も側面の黒い屋根葺きは多分1999年のものだろう)。しかし国立博物館でも中央駅にしても、内部には感動がなかった。例えば、そうですね、NYのグランド・セントラル駅と比べよう。あれも1903-1913年だからほぼ同じ頃なのだ。これは、古典主義の秩序で支配された空間の威力をよく見せてくれる。あれだって壊されたペンシルバニア駅より大したことないんだろうけど、ヘルシンキ中央駅(の内部)より良かった。確かに駅の規模は段違いで、グラント・セントラルの方が大きい。でも大小だけの問題じゃない。

     

 例えば中央駅の、線路のある吹き放ち空間に出る手前の四角いホールを見てみよう。この天井に線路方向のさん(細かい梁)が連続して何本も並んでいるが、あれに何か空間的意味が感じられますか。私にはあれは空間の豊かさを作っているという風に見えなかった。もしかしたら、民家的な発想を場違いな公共施設に持ち込んでいるのではないか。ヴィトレスクにある資料を見ると、サーリネンやリンドグレン達はかなり民族伝統的な家の設計を何戸もやっている。彼らの描いた1つのスケッチには、寝室における民族的調度をどう配置するか検討するプロセスを示されていた。こういうのが彼らにとっての室内空間の意味だったんだ(とその時思った)。それは中央駅や国立博物館に現れる抽象的な「空間性」とは別物のように思われる。彼らは工芸的なモノの肌合いに固執していて、そういう関心の違いがどうしても設計に出るのではないか。

 あと、この駅と国立博物館について行っておくべきこととしては、第一に、何というか素材(石材)が大きな表面(肌)を露出させている為に起こる空間的雰囲気のようなものがある(と思った)。それがどうも息子のエーロが作ったTWAターミナルのコンクリートが醸し出す雰囲気につながるような気がした。これは言葉で言うのがとても難しい微妙な雰囲気である。でも何かエーロが、父の作品が空間的に持っている雰囲気をTWAで無意識にリピートしたという可能性もあるような気がする。同じエーロのCBSビルだって、そばに寄れば似たような雰囲気を発していると言えなくもない。

     

 第二に、中央駅のあの印象的な丸いドームは、サーリネンによって似たような先例作品がある。それは旧ヴィープリ駅(伊藤大介『アールトとフィンランド 建築巡礼18』丸善 P.84)である。あの丸型は試されたデザインではあったわけだ。しかもヴィープリ駅はゲセリウスと共作だから、丸型がゲセリウスの発案だった可能性だってある(但しゲセリウスは06年に亡くなっている)。これは証明しようがないけれど、ゲセリウスの作風を研究するのは一興かもしれない。



*中央駅の観光局で路線図を手に入れる。

*中央駅地下を偵察する


★ラシ・パラッツィ

(解説)ヘルシンキに最初にできた商業的モダニズムビル。広いガラス窓など先駆的な機能主義建築。
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(コメント)初期モダニズムっぽい独特の曲線感があって、その意味でオリンピック競技場に通じる雰囲気も持っている。街の重要な視覚要素となっている。何となくレトロでいいです。


⇒徒歩

*ホテルにチェックイン

*中華料理などレストランの多い Annankatu通りを見る

□夕食:チャイナ(中国楼酒家)

*スーパー(S-Market)で買物






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