ヘルシンキ建築日誌 2月18日(金) (→HOME)
□朝食:ホテル
☆電気会社本社ビル (1976、アールト) 、Kampinkuja 2, Helsinki
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(解説)アールトの設計したオフィスビル。レンガ貼りの古い建物に対する青銅の外壁による増築。屋上には新旧部分を統合する連続屋根がかかる。
(コメント)全体の形は四角いビルに違いないんだけど、南北で表面の素材を変えていて、両者が思ったより複雑にかみあっている(屋上部分にも注目)。2つの顔を持つビルだ。この北側の緑の金属外装には、似たものにヘルシンキ市内でよくお目にかかる。例えばソコス・デパートのも似ている。北国で見るとこれは落ち着く(ちょっと雰囲気が沈むけれど)。この緑の窓枠のディテールは、近くで見ると手作り的設計が感じられアールトっぽいかな、と思った。南側ファサードには大きな表情があって、基本的に四角でしかありえないオフィスビルをアールトがどう造形したか、興味が引かれる。
・テニスパレス
外観は見たけれども、結局今回の旅では中は見なかった。写真も撮ってない。
*地下鉄Kamppi駅で、5日間有効切符を買う
(エスプラナーディ公園周辺)
★☆ストックマン・デパート (1930,89、4名くらいで設計)
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(解説)ストックマンデパートのコンペはフィンランドに重要な建物をもたらしてきたという。その南側の棟では、新古典主義とネオルネサンス様式の既存部分に対し、増築部分(東側)の平滑なガラス面の対比が美しい。良くできた増築の例だといわれる。
(コメント)新築部分は現代的デザインであるが、どうしてこうも落ち着いて見えるんだろう。落ち着いているから、古いデザインと齟齬を起こしたように見えない。近くの現代デザインの他のビルでも落ち着いた感じがある(でもこんな雰囲気を東京に持ち込んだら落ち込んで見える?)。そうしたヘルシンキの建物の現代デザインについては充分に考察できていない。
★スウェーデン劇場 (1866、現在の建物は1936、エーロ・サーリネン他)
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(解説)半円形のモダンに見える建物。
(コメント)そもそもラスムッセン『北欧の建築』によればスウェーデンの建物デザインは、例えばデンマークと比べるとすっきりしているのだそうだ。これもスウェーデン建築家の設計か、と思ったらエーロ・サーリネン他であった。とりあえずはモダニズムへの移行的なすっきりしたスタイルと言えましょう。私は気に入りました。
☆◆アカデミア書店(1969、アールト) 月〜金9〜21:00、土〜18:00。
残念ながら店内の写真は撮れませんでした。記述だけでご了承ください。
(解説)ストックマン百貨店の東側にある、アールトが設計したフィンランド最大の書店。特徴あるトップライトは、開いた本の形からきているという。3層吹き抜けの空間。
(コメント)天窓のスチール枠がしっかりしていて(ごつくて)、特注・手作り的設計の感じが出ている。冬場は光がそれでも足りないから、天窓の脇にダウンライトの列がある。フィンランド人の読書好きはかなりのものらしい。冬場をどう過ごすかである(それが今ではインターネット普及率世界有数となっている)。さて、以下はうんと簡単な断面である。

吹抜けには、二階三階まで見通せる開放的な雰囲気と、腰壁が白く大理石で回っていて、大理石で囲われた雰囲気の両方がある。
アールトはいくつか図書館を作っているが、閲覧室と本を選ぶ空間はちょっと別であろう。閲覧室なら余計なものまで見通せない方がいい。閉鎖された空間でいかに圧迫感を抜くかが問題となる。一方この書店では商業建築として見通せる解放感も重要だと考えた(恐らく施主もアールトも)。更には本への集中という閉じた側面も重要である。従って、この空間は白い大理石による囲われ感と解放感の二律背反にもとづいて作られているように見える。3階の吹抜けに面した腰壁はやけに高いが、これは囲われた雰囲気の方を重視したのだろう。つまり上の方は、イメージとして白っぽしく天蓋のように覆われた感じが欲しかったのだろう。尚、二階は奥の方ほど天井が高くなって変化をつけており、カフェ・アールトもある。
□昼食:カフェ・アールト(アカデミア書店2F)
(解説)カフェ・アールトは、もともと別の場所でアールトが設計して開いたのが引っ越した。今ではペンダントライトのみがアアルトによるデザイン。椅子はヤコブセンの「アント」(だそうだ)。
(コメント)ふつうの喫茶店だが、調度にモダンな落着きが感じられる。ペンダントライトはちょっと面白い(かったと思う)。
★エスプラナーディ公園周辺の街並み・建物
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(解説)ヘルシンキの最も中心部と目される2つの通りと間に挟まれた公園。ヘルシンキ観光に来た人にとってメインの場所といえば、ここと元老院広場・大聖堂だろう。
(コメント)きらびやかな建物が並び、中央の公園は雪で美しくなっている。この建物には、よく見ると古いもの・新しいもの、コテコテに装飾したもの、カタヤノッカ地区のようにユーゲント時代的なもの、しっかりとした様式的なもの(と思われるもの)、など色々ある。旅から帰って写真に撮ったものを見ると、この公園周辺はやけにきれいに見えた。メーデーには、エスプランナーディ通りはハメを外した人びとで大騒ぎになるという。そういう都市の演出の舞台として、大通りと公園が全体としてまるで巨大な広場のようである。伝統も賑やかさも端正さもある。都市を演出するよく出来た舞台といえよう。
◆ムーミンショップ(カンプ・ギャレリア)月〜金10〜20:00、土〜17:00、日曜休
◆●アルテック 月〜金10〜18:00、土〜16:00、日曜休
アアルトがデザインした家具を売る超有名店。
◆●アーリッカ 月〜金9〜19:00、土〜16:00、日曜休、南エスプラナーディ通の南
木のぬくもりを生かしたシンプルなデザイングッズ。鳥キャラクターが多かった。
◆●イッタラ
ガイドブックに「デザイナー・ショップ」として載っている場所であった。
「キッチン用品のハックマン、陶磁器のアラビア、ガラス製品のイッタラという3有名ブランド
が入っている」と書いてあったが今はイッタラだけみたい。
☆前ユニオン・バンク・オブ・フィンランド (1965、アールト) 、Fabianinkatu 31, Helsinki
キセレスハウスのあるブロックの1つ西側のブロックの西側中央あたりに、アールトらしい
建物は確かにあった。窓わくのディテールが、電気会社本社ビル(の北側)とよく似ていた。
しかし確証はなかったし、小規模で一目見ただけ。
(元老院広場〜マーケット広場)
★元老院広場 (エンゲル)
★ヘルシンキ大聖堂 (1852、エンゲル)10〜16:00、日曜12〜16:00
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(解説)19世紀初頭、首都に定められたヘルシンキの都市計画でもっとも重要な役割を担ったのがドイツ人建築家エンゲルであった。そのエンゲルが作った中でもっとも重要なのが、ヘルシンキの街の焦点として作られたヘルシンキ大聖堂と元老院広場である。大聖堂はルーテル派で、30年かけて完成した。新古典主義建築。高台にあるからヘルシンキのランドマークで、港からアプローチする時に一番よく見える街の「顔」というべき建築である。四隅の小さなドームはエンゲルの死後に追加されたもの。元老院広場(南側)に面した大階段も後のもの。他のフィンランドの教会同様に西側正面(入口)である。広場は周囲を囲む新古典主義の建物により壮麗な雰囲気を作り出した。約40万個の御影石を敷き詰める。中央にロシア皇帝像。
(コメント)ここでは元老院広場とヘルシンキ大聖堂の感想を一緒に書く。まず最初に、「新古典主義」といっても色々あると言いたい。旧東ベルリンを歩いた時、アルテス・ムゼウムは当然ながら(!)石造だった。この石造というイメージは、私にとっては石が彩色されずに裸だった事を含んでいた。20c初頭の古典主義建築である
ニューヨーク公立図書館
も、当然ながら裸の石である(あの細密さに宿る美しさについては、今はおいておこう)。しかし元老院広場の東西両脇の新古典主義建築にしても大聖堂にしても、表面の色が黄色かったりやけに白い。あれは彩色したのか漆喰系のもので表面を塗っているか、とにかく石の地肌ではなかろう。ごく一般的に言うと、彩色されたものはどうしても少し書割り的になる。この地方で採れる石材の表面は塗って隠した方がいいのか、あるいは雪景色に彩色したものの方が合うと考えたのか。理由は何にせよ、雰囲気は全く変わる。多分これはヘルシンキ独特の景色だろうし、独特の新古典主義の見え方だと思う。
新古典主義の建物はヘルシンキの他の部分では殆ど見かけなかったし、ここは街の中心たるべくお金をかけて設計施工された場所であることがよく伝わってくる。この辺はヘルシンキ図書館も含め二層分のオーダーが多いから、マニエリスム的(なもののリバイバル)といえるかもしれない。
さて次は大聖堂であるが、古典的オーダーがあるのは当然としても、あのシャッポのような緑色のドーム頂上は何となくロシアもイメージさせた。中に入ると集中式ドームの下にラテン十時平面がある。中央ドームにはドームの高さより低い天井がかかっていて、壮大ではない(ちょっとがっかり)。ドームの4本柱の支え方は、バチカンのサンピエトロ寺院も連想させる(規模は全然違うけれど)。集中式ドームは会衆を入れるのに効率が悪いといわれるが、椅子をかなり工夫して大勢入るようにしていた。基本的にはプロテスタントだから装飾も少なく内壁の白い表面が多く出ている。これがカトリックやギリシア正教だと、もっとコテコテに飾りまくる場合が多い。ローマではカトリック教会を沢山見たが、たとえシンプルなインテリアであっても古かったり石造だったりして雰囲気が違う。それと比べるとこの大聖堂の内壁には白く間延びしたような空白感がある。それで残念ながら空間体験的にはそんなに感動はなかった。
★ヘルシンキ大学図書館
残念ですが内部の撮影は不許可だと推察し、撮影しませんでした。写真がなくてすみません。
(解説)これもエンゲルが設計したものだという。この大学は設立当初は「帝立アレクサンドル大学」だったそうだ。
この建物は後に改築されたようです。私が見に行った時のものはもう見られないようです。
(コメント)これは一言でいって掘り出し物だった。外見はオーダーが並ぶ古典的なもので、「ああ、そう」で通り過ぎてしまいそうだが中が振るっている。まず通されるホールには彩色されたオーダーが室内に立ち並んでいて、天井画もカラフルなのである。狭いところに(部屋としては広いとしても)オーダーが密集して独特の空間・意匠密度のようなものを作っている。元老院広場がカラフルだといっても、その比ではない。同じ古典主義的といっても、ニューヨークの古典主義建築で見たような古典的に整然とした空間ではなくて、もっと何か彩られた濃密さがある。
次に中央書架に行くと天窓を中心に5層くらい吹抜けている。各層は天井が低い積層書架で、吹抜けを中心に放射状に書架が並ぶ。鉄を使って柱を細くしてある。手前の最初に見たホールとその点が全く違うし、明るさも全く違う。実にかわいくて「手になじむ」ような書架空間だと思った。更にもう1つ部屋があって、最初に見た広間に似た濃密さがあった。とにかく小さくまとまっていて、冬の寒い日も中に入ると小さくて暖かくて濃密という、そういうイメージになる。同じエンゲルが作ったとされる
ヘルシンキ大聖堂
のインテリアとこれだけ違うのはどうしてか。他の建物も見ないと何とも言えないが、この図書館は、けっこう他の人の手が加わっているのかも知れない。
注意として、ここは観光客を入れる場所ではない。入るのならあくまで利用者の顔をして、入口を入ってすぐ右の部屋で荷物と街頭を預ける。観光的な見学者が増えて問題視されてもナンだから、あまりキョロキョロしない方がよかろうと思う。中の写真撮影も遠慮した(恐らく不許可だと思う)。しかし内容的には写真に撮れなくて残念だった。事前に交渉すれば何とかなったのかもしれないが。
□休憩:図書館地下のカフェにて
★市庁舎(19c初頭、エンゲル)
最初は高級ホテルとして建てられた新古典主義建築。市が買い上げた。小規模な建物であり、
中には市庁舎の機能が一部入っている。観光で入れる場所ではなかったので、前を通り過ぎただけ。
◆キセレス・ハウス
元老院広場の南、市庁舎の西隣のブロックの北西部にある。
手芸・アート・みやげその他のアーケード。
★マーケット広場 (+周辺の街並み・都市空間)
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(解説)ヘルシンキの港に面した広場で、市が立つ。
(コメント)広場といっても要するに交通の要衝に波止場の広がりが付いたという感じ。囲われているわけではないし、まとまりのある場所ではない。北側は自動車がガーガー通るし、西側は別の波止場に向けて延びている。私達が行った時は2時を過ぎていたし(そして何しろ冬だから)露店は出ていなかった。吹きさらしている。しかし波止場なんて恐らくどこでもこんなものでしょう。海が凍っていて、海の上を海鳥が歩いているのは見ていてユーモラスだった。
◆オールドマーケットホール
マーケット広場の西側を南に少し回り込んだところにある。
屋内には寿司カウンター「海苔寿司」もあるというが、一皿26ユーロと高価(!)。
⇒トラム4番
*酒屋
*スーパー(S-Market)で買物
□夕食&ワイン:ホテルの部屋にて
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